「な……なんでしょうか」
昨日見た光景がフラッシュバックしてきて、声が震える。
「昨日、見たよね?」
「わ、私、誰にも話したりしないので……安心してください! それでは失礼しま……」
「待ってってば。そんなに慌てなくてもいいじゃん? もっと話そうよ」
いやいやいや。
私はなにも話すことないよ。
なんで私にそんな構ってくるの……?
先輩が怖いよ。
「俺、羽音ちゃんのこと好きになっちゃったかも」
「………えっ!?」
意味がわからなさすぎて私は思わず大声を出してしまった。
「だから、昨日忘れ物取って帰らなかったみたいだし、今日ここに来るかなって待ってたんだよ」
そういえば昨日、私……。
うっかり、忘れ物取りにきたって言っちゃった……。
「羽音ちゃんはキスとか、したことある?」
先輩は一歩ずつ、私の方へと近づいてくる。
「あ、あの……っ」
こ、怖いよ。
怖くて変な汗が出てきた。
そしてとうとう、後ずさりしてるうちに私のすぐ後ろは机があり、逃げ場はなくなってしまった。
「その様子だと、キスはまだかな?」
「あ、あはは……」
図星を突かれて、笑うしかない。
あぁ、情けない。



