それにしても、やっぱりカサの中は狭い。
黒澤くんの匂いが鼻をくすぐる。


「羽音、あんまり離れたら濡れるよ」


「……っちょ、ちょっと」


「恥ずかしくて俺から離れるとこ、中学のときから変わってないね」


あはは、と笑う黒澤くんに私は頬っぺたを膨らませる。


「……そ、そんなことないもん」


黒澤くんが急に抱き寄せるからビックリしただけだもん!


「え、なにその表情。初めて見た。え、可愛い。俺の目がカメラだったら連写したい。そして永久保存したい」


「なっ、なに言ってるの……」


「はぁ〜〜……ほんと、飽きないな」


ダメだ、話にならない。
なに言っても可愛いしか言わないもん。


「中1のころの黒澤くんって……そんなんじゃなかったよね」


「あ、あのときの俺は……まだ、ウブだったし、思春期真っ只中だったし」


「あのときの黒澤くんの方が素直で照れ屋さんで可愛かったのにね……」


「……羽音」


急に立ち止まった黒澤くんに合わせて私も立ち止まる。


「どうかした?……にゃ、にゃにふにゅの」


私の方を向いたかと思うと、両方の頬っぺたを片手で掴まれた。