「じゃ、帰ろっか」
「うん、そうだね」
黒澤くんが紺色のカサを広げる。
わりと、大きいカサだな。
そんなことを考えながらカサの中、肩を並べて帰る。
「折り畳みガサよりは大きいからマシでしょ?」
「え」
「覚えてる? 雨の中一緒に帰ったときのこと」
「……うん、覚えてるよ」
黒澤くんも覚えてたんだ。
もうさすがに2年以上経ってるし、忘れてるかと思った。
「あのときは折り畳みガサだったから、さすがに狭かったよなぁ」
「そうだね。……あ、カサ持とうか?」
「いいよ、俺の方が背高いし。羽音の背の高さに合わせてカサ持たれたら、俺、腰曲がるよ」
「し、失礼な……!」
確かに、言われて見れば……中1のときに比べると身長差すごいよね。
目線の高さ、ほとんど変わらなかったのに。
「あはは、冗談だって。怒っても、ほんと可愛い」
「……っそ、そんなワケないっ」
事あるごとに“可愛い”と言ってくる黒澤くん。
免疫のない私の心臓には悪い……。