「だ、誰かいるの!?」
女の子が慌てた様子で声を発する。
そして本棚と本棚の間から、神楽先輩が出てきた。
「あ、羽音ちゃん」
さっきまであんなことしてたのに、ケロっとした表情の神楽先輩。
「かっ、神楽せんぱ……っえっと、その忘れ物を取りに来ただけで……」
先輩とは反対に、焦りすぎて変な汗が出てきた私。
「……っす、すみません!!」
その場にいられなくなって、逃げるように図書室を後にした。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
階段を下りきったところで呼吸を整える。
私ってば、何しに行ったんだろう……。
目的のスマホは手に入れられなかったし。
ただ、人のキスを見て……帰ってきただけ。
神楽先輩ってやっぱり、たくさんの女の子とああやって……。
お、大人のちゅーとか……し、してるのかな?
って、なに考えてるの私!
黒澤くんのところに早く戻らなきゃ。
スマホは……本当はなかったらツライけど仕方ない、明日登校したら朝イチでまた図書室に見に行こう。



