「羽音のためならびしょ濡れになるぐらい、どうってことないよ?」
いやいやいや。
さすがに私もそこまで鬼じゃない。
「……っじゃ、じゃあ黒澤くんのカサに入れて」
「まかせて」
微笑む黒澤くんの顔を見て、私はふと思い出した。
中1のとき、一度だけ雨の中一緒に帰ったなあって。
まだお互い好きかどうか確かめる前のこと。
そのときも確か、私がカサ持ってきてなくて……。
『羽音、今日部活ないから一緒に帰ろ』
『う……うん!……って、雨降ってる』
『今日は午後から雨って天気予報で言ってたもんな』
『えぇ! 私カサ忘れちゃった……』
その日は朝寝坊して慌てたせいで天気予報を見る時間もなかった。
『大丈夫、俺カサ持ってきてるから一緒に入ろう』
『い、いいの?』
『もちろん』
そして私と黒澤くんは1つのカサに入って帰った。
折り畳みガサだったから、狭くて歩くときにどうしても肩が当たってしまう。



