「羽音!」
「……あ、黒澤くん!」
黒澤くんが息を切らして私のもとへ駆け寄る。
「羽音、大丈夫!?」
私の両手を掴んで心配そうに顔を覗き込んでくる。
「え?」
「アイツになにもされなかった!?」
あ、アイツって……?
「昼休みのときの先輩! さっき声かけられてただろ?」
「え、見てたの?」
「階段下りるときに男と羽音の声が聞こえて、そのあと目の前をアイツが通っていったから……焦った」
だから慌てて下駄箱に……?
「アイツに触られてない?」
「……ふふ、心配しなくても触られてないよ」
心配しすぎな黒澤くんに思わず笑ってしまう。
「よかった〜〜……」
「黒澤くん、過保護な親みたい」
「親じゃないよ、俺は彼氏! 過保護なのは認めるけど……」
「……そっか」
まさか、あのどちらかと言えば口下手だった黒澤くんが、こんなに愛情表現してくるなんて。



