「あの、さっきは……」
「さっきの男って彼氏?」
「え、っと……そ、そうです」
そう答えたら、なんだか先輩の目は笑ってるんだけど心は笑ってない感じがした。
「へぇ、そっかぁ。そりゃこんなに可愛かったら彼氏ぐらいいるか」
「いやいや……」
残念だなあと呟く先輩に否定をしながら少しずつ後ろに下がって距離を置く。
「……あ、羽音ちゃん逃げた。俺のことキライ?」
私が後ずさりしているのを見て神楽先輩が笑う。
グイグイこられるのはやっぱり……苦手だ。
私と話そうとしてくれるのはすごく嬉しいけど……でも……。
「ち、ちが……っご、ごめんなさい。私……」
「神楽せんぱーい!」
言葉をつまらせる私の声に被せて少し遠くから誰かが先輩を呼ぶ。
「……あ、俺そろそろ部活行かなきゃ。じゃあまた」
「は、はい」
あぁ、よかった。
なんて、ホッとしている自分がいた。
手汗かいちゃった。
黒澤くんの前では絶対そんなことないのに……。



