【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。




それにしても黒澤くん、少し見ない間に私と同じぐらいだった身長もかなり伸びて……可愛らしかった顔も今は大人の男性の顔つきになっている。
声だって、昔はかなり高かったのに。


優しい笑顔だけは昔のまんまだ。



……でも、私はやっぱり黒澤くんがキライだ。
だって、私を(もてあそ)んだんだもん。
私は……本当に本気で大好きだったんだ。



黒澤くんにとって私はただのクラスメイトだって知ったとき、どれだけ泣いたことか。


彼からすれば大したことじゃない、ただの気まぐれにすぎなかったのかもしれないけれど、私は本当に辛かったんだ。


「……どうかした? そんな暗い顔して」


黒澤くんの声にハッとして、我にかえる。


「なんでもないよ」


精一杯の笑顔を返したけど、過去の黒澤くんのトラウマを思い出して急にヘンな汗が出てきた。


ああ、どうしよう。
手も震えてきた……。
黒澤くんが怖くて仕方なくなった。


「あれ、千葉さん手が震えて……」


「さ、触らないで!」


私の手に触れようとした黒澤くんの手を、私は反射的に思いっきり振り払った。