「……ベーコンまで……」

俺は、近くに寄ってきたベーコンを抱き締めて、地面に座り込む。

「……お前……」

紗奈がもらってきた犬は、俺に寄り添うように膝の上に乗った。

「……お前は、不思議……だな。紗奈には、怖がるのに、俺には、寄ってくるのか……」

俺は微笑んで、紗奈がもらってきた犬を撫でる。

「もしかしたら、何かを感じ取ったのかも知れないね。同じ何かを……」

父さんの言葉に、俺は2匹を抱き締めて、泣き崩れた。



「俺ね。パスタの気持ち、分かるんだ」

夜。

俺は、パスタと名付けられたベーコンと同じ犬種のボーダー・コリーを撫でながら、話しかける。

「俺もね。殴られたり、してたからさ」

返事が無いと分かっていても、俺は話すのを止められなかった。

「今の家族は、義理なんだけど、前の母さんから殴られてさ、死ねだの消えろだの言われて……」

俺は、不意に母さんから言われたことを思い出して、気が付けば泣いていた。

「……死にたい。消えたい……」

俺は、呟く。母さんは、きっと死んでほしいって願ってる。ずっと、言われ続けたから。

「……」

パスタは、俺をじっと見た。

「……あはは……そんな目で見られたら、死にたくても死ねないや……」

俺は、微笑んでパスタを撫でた。