ドラゴン・ノスタルジア

「…………大地、そろそろ起きないと、今日は……」


 彼は私の言葉が聞こえないふりをして、唇から首筋へゆっくりと、何度かキスを落としていく。


「……じゃあ、式が終わってからなら、いい…?」


 …………。


 前にもこんな風に、聞かれた様な。


「…うん」





 

 コロナウイルスが終息し、私達の世界は平穏を取り戻した。人々が心配無く集まれる日が来るまでには、時間がかかったけれど。

 ちゃんとしたワクチンも無事開発され、未来に向けて一歩一歩確実に、私達は毎日を過ごしている。

「結婚式に来る生徒達を見て…驚くなよ?」
 
 籍は数年前に入れていたが、そろそろ式を挙げようという事になり、カフェ『ノスタルジア』を貸し切りにして、今日は皆を招待した。


「…驚く?」

 大地は意味深な微笑みを浮かべ、私の耳元で囁いた。

「お前ら全員、びっくりするぞ」


「…………?」


 豪華な料理が並ぶ、カフェ『ノスタルジア』での披露宴が、賑やかに始まった。

 黒のタキシード姿の大地と、プリンセスラインのウエディングドレス姿の私。

 新郎新婦の席に並んで座ると、懐かしい気持ちが蘇って来た。


「…見覚えがある」


「どうした…?さくら」



 私は一つの丸テーブルに座る、大地が通う高校の、教え子たちを見つめた。



「あの子達…!」