ドラゴン・ノスタルジア

 布団の中で、目が覚めた。

 
「…………」


 春の日差しが窓から差し込む。…少し眠り過ぎたみたい。


 長い長い、いつもの夢だった。


「…………また見ちゃった。あの時の夢」


 10年前、コロナウイルスが伝染し始めた頃を、私は何度も夢に見る。


 大地がドラゴンになって、みんなを別な世界に連れて行ってくれて、そこで私達の結婚式を挙げた時の夢だ。


「…………大地」


 息がかかるくらいの距離に、整った夫の寝顔がある。


「……まだ寝てる?」


 彼の髪に触れ、そっとキスをしてみる。


「………」


 艶やかで柔らかくて、触り心地のいい黒髪。昔はピンク色だった。どこからが夢だったのか、記憶が徐々に曖昧になっていく。


 大地は全然起きない。時計を見ると6時を過ぎていた。


 私は彼が起きないようにそっと、布団から出ようとした。


「…………さくら…?」


 彼は私の腕を掴み、


「…………まだ、ここにいろよ…」



 私の体を少し強引に、
 ぎゅっと引き寄せて、抱きしめた。



「おはよう。…………起きた?」



 彼は微笑み、私の首筋に顔をうずめて噛みついた。




「……起きた」




 ドラゴンに、血を吸われたみたい。





「………おはよ」




 彼はゆっくり目を開けて、




 私の唇に、そっとキスをした。