「…お前はどうして、ここにいるの…?さくら」


 小さな大地に聞かれ、とても返答に困る。


「…わからないの。気づいたら、ここにいたから」


 私はあたりを見回した。



「ここはどこ?」



「かくりしつ」



 ………隔離室?




「…あなたは、大地なの?」



「うん」



「……あなたはどうして今、この『隔離室』にいるの?」





「おれは本物の『神』じゃなくて、はんぶん『人間』だから」




「……え?」




「おれはビョーキに、かかりやすいから」





「……」





「すごく体が、よわいから」





 彼の瞳は、宙を彷徨っている。




「せきをしたり、くしゃみをしたり、ねつを出すと」



 心臓が、ずきりと鳴る。



 思い出した。



「神さまたちに、たくさんメイワクがかかる」




 この瞳を私、良く知っている。





「…………」





 はじめて会った頃の大地はいつも、この表情をしていた。




「つらいとか、くるしいとか、さびしいとか、いやだとか、言うたびに」




 何かを諦めた様な。




「神たちはおれのことを、大声でばかにする。とくにカシャ」





 とても、寂しそうな顔をしていた。





「おれはよわいから。おれが生きているだけで、みんな嫌な顔をする」