コンコン。


 ノックと共に、久遠様と弥生さんと梅が入って来た。

「とても綺麗ね、さくらさん!」

「おめでとう」

「さくら…おめでとうございます」

 梅は、涙ぐんでいる。


「ありがとうございます」


 私が答えると、久遠様は笑いかけてくれた。


「大地には知恵があるが、力が弱い」


「…」


 大地は目を伏せた。


「正当な根拠の無い理由で、大地がいつか神々に殺されるのではと、心配してばかりいた」

 だからあんなに厳しく、大地を叱っていたんだろうか。

「人間になって君と幸せになるなら、こんなに嬉しい事は無い」

 久遠様は複雑な表情で続けた。

「だが神々は今、結論の出ない会議を続けている。『人間世界と通じる道を、塞ぐべきだ』と」

 話を聞いていた大地は、久遠様を凝視した。


「…何だよそれ…?!」


 梅が答えた。

「この城は人間の世界とこちらを繋ぐ、たった一つの空間の上に建っています。遠い昔、私がここに城を作って、多くの子供達を育ててきました」

「今回のウイルス騒動を機に、人間嫌いの者達が、この城を壊そうとするかも知れない」

 父と母は驚き、目を見合わせた。


 久遠様は考え込みながら続けた。

「式の最中に妨害が起こったら、我々は子供達を守り、皆を元の世界に返す。大地、お前たちもすぐに、人間世界に戻りなさい」

「…わかった」