「私…ドラゴンになっちゃうの?」


「…は?」


 大地は驚いて顔を離し、私を見つめた。


「どうして?」


「だって、私の血を吸ったじゃない」


 大地はパジャマ姿のまま、畳の上にあぐらをかいた。

「吸血鬼に血を吸われると、吸われた人も吸血鬼になるって本に書いてあったよ?」

 私は大地と向かい合わせに正座した。

「それは人間の恐怖心が作った物語だろ?それに俺は、吸血鬼じゃない」

「…じゃあ私、ドラゴンにならない?」

「ならない。…つーか血を吸われたくらいじゃドラゴンになれない。力の強さが全然違う」

 …そうなんだ。

 大地は照れた様に顔を赤くして、こう続けた。

「血を分け合う行為はドラゴンの愛情表現だ。俺は世界中で、お前としか出来ない」

「……」

「俺はお前の血を貰っただけじゃない。俺の血も今、お前の体の中に入ってる」

「…?!」

 大地の瞳が、急に色めいた。

「…今度は人間の愛情表現を俺に教えろよ、さくら」

 彼は私の髪に触れ、
 櫛を使う様に優しく指を通した。

「……!!」

 私は布団の上に、
 体ごと押し倒された。

「…どうやるんだ?」

 …教えられない!

「…結婚してからじゃないと駄目…」

「…照れてるだけだろ?」

「違う!早くお風呂に入って来て!」


 真っ赤になって体を離す私を見て、大地は笑い、素直に従った。