「…やっと笑ったな、さくら」

 満開に咲かせた桜の方から大地は両手を下に降ろし、照れた様に微笑んだ。

「久しぶりに、お前の笑顔がきちんと見れた」

 私は夢見心地で返事をした。

「…ありがとう。すごく元気になったよ」

「…なら良かった」

 彼は少し残念そうに、目を伏せた。

「…けど、これじゃ駄目だ」

「どうして?満開なのに」

 咲き過ぎなくらい。

「…何かが足りない」

「…?」

「一時的でいいから世界を繋ぐ、入り口を作りたいんだけど…」





「何をしている」

 本殿の方角から、久遠様がこちらに歩いて来た。

「…父さん」

「君はさくらだね」

「はい」

「私は大地の父、久遠です」

 私は頭を下げた。

 久遠様はこちらに歩み寄り、微笑んで私を見つめた。

「大きくなったね。…先程は君に挨拶もせず、見苦しい親子の喧嘩を見せてしまい、申し訳無かった」

「いえ」

 優しい雰囲気の久遠様に、少しほっとしてしまう。

「私は大地と君を結婚させたかったんだが、もしかすると…難しい状況になるかもしれない」

「…え?」

「大地、…今、神々は会議をしている」

「…!」

 …会議?

「伝染病に苦しめられたこの世界の人間達を、どうするか」

「…どうするか…?」


「このまま見捨てるか、人間世界を存続させるかをだ。私は今からあちらに戻る」