でも、イタズラには変わりないだろう。

「僕は君の事を全く知らないのに、
 どうしていきなり告白するんだ?」

彼女を横目に見ながら、思った事を口にした。

「私の事を知ってもらいたいからです!」
ドヤ顔で言ってくる彼女。

「え?」
あっけにとられる僕。

「私は、先輩のことが好きです。
 だから、まずは先輩に私の事を知ってもらおう
 と告白しました」

実際に目の前で好きだと言われると、
少しドキッとしてしまう。

…と、いうか「先輩」という言葉から、
彼女は僕より年下である事が分かった。
だから、僕は彼女の事を全く知らないのか…

しかし、何故彼女は、
僕のことを知っているんだ?


「だからって、まずは挨拶とか…段階があるだ
 ろ」


「先輩のことですから、

 何故今まで挨拶してないのに、
 いきなり挨拶をしてくるんだ?
 何か裏があるに違いない。
 近づかないようにしよう。

 といったように疑われて避けられると思ったか
 ら…」

ここで彼女は少し息を整えてから、
真っ直ぐに僕を見て言った。

「先輩には素直に行動しないと信じてもらえない
 と思ったので」

内心揺らぎそうになりながらも、
僕は彼女がまだ信じられない。

僕の疑り深い性格を知っているのか。
どこで彼女は知ったんだ?
面倒な性格だと知っても、僕のことが好きだというのか?何故?
次から次へと疑問が沸き起こる。

僕がぐるぐると思考を巡らせている間にも
彼女は話を続ける。


「手紙で書いたのも、先輩に確実に読んでもらう
 ため。
 いきなり声をかけたら、逃げてしまうかもしれ
 ない。
 
 体育館裏に呼んだのも、手紙だけでなく直接想
 いを伝えるため。
 手紙だけだと先輩の場合、気持ちは伝わらな
 い。

 私が先輩を知ったのは、入学式の日の帰り道、
 先輩が犬を3匹連れて散歩しているのを見かけ
 た時です。
 その時の顔がとても優しくて、一目惚れしまし
 た。」

彼女は、次から次へと、僕に信じてもらえるように話していく。

僕は、その言葉を聞きながら、

初めて彼女の顔を真っ直ぐに見た。



彼女の頬はとても赤かった。