風呂場で服を脱ぎながら、今日はだいぶ綾瀬くんが優しかったなぁと思う。
いきなり何でなのだろう?
何も喋らない綾瀬くんに付き纏って一人でペラペラ何でもかんでも話してきたけれど、まさかちゃんと耳に入っていて、ハマっている飲み物を覚えていてくれるとは。
一番風呂の暖かさと刺激に足をつけ、ゆっくりと首まで浸かる。 私の体積分広がるお湯の中で、体をゆっくり撫でた。
出てから気づいたのだが、中学からの習慣でつけていたテーピングが切れていることに気づいた。
「ああ~、よし、まだ薬局空いてるよなぁ。」
急いで体を拭き髪を乾かし、服を着て 財布を持ち家を出た。
薬局までは歩いて10分から15分ほどで、その間に公園がある。真っ暗の中、うすら青いあのLEDの街灯に照らされる公園がある。
もし生きていないものを見てしまったら怖いのでなるべき早く通り過ぎようとしたのだが、怖いもの見たさでなんとなくのぞいてしまった。
一瞬体がびくりとする。その公園のベンチにただ一人座っている人がいたからだ。
「……あれ」
けれどその後ろ姿はよく見たものだった。
ザリザリと石を擦り合わせる音を鳴らせて公園に入る。その後ろ姿に近づいていった。
「綾瀬くん、また一人で来ちゃったの?」
ベンチに座る綾瀬くんに声をかけるが、彼は呼吸が苦しそうに息をすってばかりで、下を向いている。
彼の視界に入るように屈んで、手を握った。
「綾瀬くん、大丈夫?泣かないで。」
下を向く彼は苦しそうに涙を流していた。
「また嫌な事がお家であったら私のとこに来ていいって言ったじゃん」
ただ涙を流す綾瀬くんが可哀想で、頭を撫でるけれど、昼間のように抵抗はされない。
こんな日、綾瀬くんはこうなる。
「苦しいね、…苦しいね」
そっと私の胸に体をもたらせると、綾瀬くんの悲しみが私の服も濡らす。
嗚咽を漏らす彼はただ無抵抗に私に抱きしめられた。
