「部活サボり?」
「ちげぇよ。教室に忘れ物したから途中で抜けてきたの。今戻るとこ。」
「ほぅ。楽しいか?部活」
「まぁお陰様でな。」
各自、ローファーと運動靴をすのこの向こうへ放り投げ、足を入れる。
「じゃあまた亜子特製お弁当つくって試合応援しに行ってあげるね?」
彼を見上げながらそう言うと黒い肌にはえる白い歯を見せて笑いながら、
「あぁたのむよ」
と言ってくれた。
じゃあ部活頑張ってね、と手をふろうとすると、春樹が「あれ?なんで今帰り?」と、私の後ろに声をかける。
後ろから物音がして春樹の視線を追ってみると
私の大好きな綾瀬くんがいるではないか。春樹をほっぽりだしてローファーのまま、まだ中にいる綾瀬くんの元へと駆け寄る。
「わ~い!綾瀬君!
これは運命!同じ玄関に同じタイミングで来るなんて運命!そして一緒に帰るしか...おーい綾瀬くんたら~!」
1度たりとも私と目を合わさずに春樹の元へ歩いていた。
春樹は楽しそうに話しかける。
「お前、あれだろ?
委員会決めの時寝てて放送委員会になったはいいけど、最初の委員会の仕事サボったから呼び出し食らってたんだろ?」
そういわれた綾瀬君は、めんどくさそうに頭をかいて頷いた。かわいい。
すると綾瀬君が右腕の袖を少しまくって腕時計をみた。
「春樹、部活時間大丈夫?」
春樹の部活の心配をしていたようだ。なんて心優しい綾瀬君。
「あ、じゃあ俺部活行くわ。じゃあな綾瀬。亜子もな!」
「え、あ!うん!ばいばぁい!がんばって!」
春樹の走る後ろ姿に一生懸命手を振っているとやはり綾瀬君はもうそこにおらず、帰り道の歩みをすすめていて
慌てて綾瀬君を追いかけて隣に並ぶ。
「まってまって、今日バイトないんでしょ?どうせ方向一緒なんだから一緒に帰ろ??」
実は綾瀬君のお家と私のお家はとても近い。高校入学直前に綾瀬くんが近くに引っ越してきたのだ。
学校から二駅の住宅地。
もうこれは運命としか言いようがない。
ドブを覗くかのような表情で私を見る。
「またお前シフト見たのか。」
「え、ごめん、てへ、見えちゃったの!」
「消えろ」
「やだ~すき~綾瀬君だいすき~。」
