繰り返しその柔らかさを感じていると手首にひんやりとした彼の手が添えられた。

「わ。綾瀬くんの手、つめたいね?」

「お前さ」

「、?」


あれ、綾瀬くんと私の目線ってこんなに違ったかな?いつも私の顔なんかまともに見ないから視線の角度に違和感を覚える。

綾瀬くんはまっすぐ私を見つめていて、
「なに?どうしたの?」と言おうとしたけれど間なんか与えて貰えず彼は言った。


「何笑ってんの?」


「…え?」


「何が楽しいの?何がおかしいの?」


今日の綾瀬くんはおかしい。

でも指摘されてから気づいた。私の口角はかなり上がっていた。


「え?あれ。ご、ごめん。でも寝癖が可愛くて笑っちゃってたみたい。」


するといきなり顔中心に衝撃が走り、つられて勢いよく肩が前後に揺れる。

視界いっぱいに綾瀬くんの険しい顔。

私は彼の右手で両頬を掴まれていた。



「ふあッ???なにひゅる」


なにするの?最後まで言わせてはもらえなかった。


「お前、最初から笑ってたぞ。人を馬鹿にするのやめろ。」



突然のことで頭が真っ白になったところにチャイムの音が耳に入った。

合図がなってすぐ、綾瀬くんは持っていたゴミを捨てるみたいに私の両頬を離して教室に入っていった。