それを知ったのは登校したすぐ後だった。
洗い立ての沢山のシャツの匂いが混じって鼻腔に届くと、いつものように学校にいる事を自覚する。
けれども今日はやけに空気が色めき立っていた。
「水瀬桜子(ミナセ サクラコ)が綾瀬に告白してたらしい」
なんだなんだとキョロキョロしていると夏帆がそんな事歯牙にもかけない顔をして一部始終を話し始める。
「ゆぁ……、へはぁ???」
あまりの突然の衝撃で、一部始終の序盤で声にならない声を出してしまった。
「水瀬桜子が今さっきここに来て、『綾瀬くん、告白がしたいのでちょっと時間ください!』って綾瀬の手を引っ張ってどこかに行った。」
な、なんだその圧倒的に堂々とした態度は。
「水瀬桜子が?」
「水瀬桜子が。」
「あの、み、水瀬桜子がぁ?」
「ああそうだよ!鬱陶しいな!ここら辺で一番可愛いとか言われてる水瀬桜子だよ!」
あまりのしつこさに夏帆が机を叩き怒る。けどそれくらいの衝撃だった。
何故今、何故ここで、何故綾瀬くんなのだ?そりゃあこんな空気にもなる。水瀬桜子はここら辺では一番可愛いと言われてるし顔で近づいてくる男が沢山いるのに鉄壁のガードで男を寄せ付けないのだ。
でも今日、何故。何故綾瀬くんに。
膝から崩れ落ちる勢いだった。混乱したまま立ち尽くす私を必然的に周りの生徒が見つめてくる。
私が綾瀬くんを好きだからだ。
「あ、綾瀬帰ってきた」
