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いつもの様に登校前の支度をしていると、珍しくスリッパで歩く、床を弾く様な音が聞こえてきた。
その音がする一階へ降りて行くとその人はテーブルに一人分、忙しなく流れるテレビの前の席に座っている。ホカホカの料理を用意し綺麗に並べ終えていた。
「朝、起きてるなんて珍しいね」
冷たく声をかけると、彼女は振り返らず答えた。「あ、亜子。今日おねぇちゃんの大学の紹介があるらしくって、インタビュー受けたらしいからリアルタイムで見ようかと思って!」
テレビをちらりと見ると朝のニュース番組のキャスターが楽しそうに笑い合っている。
「そうなんだ。」
彼女以外に使われていない大きなダイニングテーブルは彼女の前以外は何も置かれていない。はなから何も期待していなかったのでそっと声をかけた。
「じゃあお母さん、行ってくるから。」
「あ、夏樹と春樹にゴールデンウィークのこと話してね」
話したよ、うるさいな。強く息を吐くようにつぶやく。
お母さんは一度も振り向かなかった。
