松村が行った後野口先生と呼ばれた彼は大きく溜息をついた。
「も〜、なに?今日、そんなにシャトルラン嫌だったの?…松村先生超怖いし嫌か。」
「夏樹ちゃん」
私がそう呼ぶと彼は焦って勢いよく周りを確認する。
「ちょっと下の名前で呼ばないでよ!ここ職員室前だから!」
「…ごめん、夏樹ちゃん、テーピング忘れたから」
小さくぽつりと言葉を垂らしそっと夏樹ちゃんを見ると、悲しそうな顔をされた。
彼は野口夏樹(ノグチ ナツキ)24歳の新人教師。物腰柔らかい人間なので生徒から割と好かれている方だと思う。春樹の兄なので春樹と同様私の幼馴染である。
「…長袖じゃだめだって?」
「うん」
「そっか、じゃあ丁度コピー取らなきゃいけなかったから資料室手伝いにおいで?」
夏樹ちゃんの優しい言葉尻が私を撫でた。
