綾瀬くんは私が大嫌い



しばらくして綾瀬くんが私をそっと押し退ける。


「…落ち着いた?」


隣に座り、顔を覗くとまだ目や鼻が赤いものの涙は止まっていて、不機嫌に何か言いたげな顔をして鼻を一回すする。

 
「綾瀬くん、肌白いから赤いの目立つね」


赤くなったところを撫でようとしたら、結構強めに弾かれた。


「イタ!そういう事するの?あ、チューしてやるぞ」


「やめろ」



抵抗する綾瀬くんの服をわざとらしく掴んで、近づこうとして、そこでふと気づいた。首筋にも赤い箇所がある。血が滲んでいた。勢いよく何かに引っ掻かれた様な傷跡だった。

掴んでいた服を離し右手の人差し指でそっと撫でるとミミズ腫れになっていることがわかる。


「…触るな」
 
 
ゆっくり綾瀬くんが私の右手に触る。


「うん」


返事をしつつ、私は撫でる事をやめなかった。