宝石龍と不良

四粒

俺は自分の家に篭る
怖かった
人が嫌いだからじゃなくて自分が怖い
俺は触れたものを宝石にしたり創り出すことができる宝石龍だからだ
俺は部屋に転がる宝石を口に含み飲み込む
俺は基本人間の食べ物は食べない
宝石を口にする
(ダルッ)
俺はピアスを揺らして舌打ちした
竜胆のあの顔が忘れられない
怯えてもない
だけど
悲しそうな顔
俺は壁を殴り、睨む
人はいつか裏切る
俺は神も人間も嫌い
俺自身も
なんなら
俺が俺に触れて壊れて仕舞えばいい
そう思うが
怖くてできない
「………」
学校では俺は屋上で身を隠す
必ずあいつが来るからだ
あいつの匂いと音が消えた後出る
それの繰り返し
だが
それが終わるときだってくる
俺が屋上で寝ていると下の方から騒がしい声がした
「止めろ!」
あいつの声がした
俺は下を見る
すると
虐めを止めるあいつ
(学校一恐れられている不良、見物かな)
俺は最低だがそれを見つめた
竜胆は虐めっこを殴り飛ばしいじめられっ子を逃す
相手は五人
果たして勝つか?
いや
無理だろう
俺は竜胆の後ろに回った奴がバットを持ったのを見た
人って馬鹿だよな
俺って愚かだ
身体が勝手に動くから
俺は龍の姿になり目を閉じている竜胆を囲むように包む
触れないように
壊れないように
「ガウゥウゥゥ!!」
俺は五人に向かって唸る
竜胆がこちらを見て固まった
「龍!?」
俺は五人の顔を見つめる
「架空の生き物じゃ?!」
(それはお前ら人間の思い違いだ)
「ひ、ぇ」
五人は腰を抜かしつつも逃げようと必死
俺は五人に向かおうとしたが竜胆が止める
「待ってくれ」
(あ?)
俺は唸った
竜胆は五人の方へ歩き
「もう虐めをするな」
と言った
あぁ、わかった
(竜胆が不良と言われる裏には優しさがある)
俺は五人の顔を見て牙を向ける
五人は頷き走り出す
俺も飛び立とうとすると
「待てよ」
竜胆が俺を見つめた
「………」
俺は黙って竜胆を見る
竜胆は頭を下げてきた
「助けてくれてありがとう」
泣いていた
人間は脆い
けど
人間は儚い
命もその身も
だからこそ
互いを守り合う
「……」
俺は拡がっている翼を閉じてその場に伏せる
「許してくれるか?」
涙目で言われた
「ガウゥ」
俺は唸る
(仕方ないだろ、そんな目で見られりゃな)
「お前の事、知りてぇ」
その目は真剣
「………ガゥ」
俺はその目に弱い
人の姿になる
俺は真っ直ぐ竜胆を見た
「後悔しても知らないからな」
俺は説明を始めた
生まれたところ
両親を失った事
捨てられた事
拾われた事
虐めのこと
力のことを
全て伝えた
「分かったか」
俺は再び龍の姿になりそっぽを向いた
「お前」
竜胆は近付く
そして触れようとした
俺はシワを寄せ唸る
「大丈夫」
そっと触れる手
俺は目を見開く
「な?大丈夫」
竜胆は微笑んだ
俺に触れている
その手が
暖かくて
柔らかくて
傷つきそうで
優しくて
心が溶ける
「………」
俺は自分の鱗を一枚竜胆に渡す
「それ持ってろ」
俺は説明を始めようとした
「話せる!」
塞がれた
「だから渡してるだろ」
溜息を吐きつつも説明する
「それ加工するから待ってろ」 
俺は目を閉じてその鱗に息を吹きかけた
「ん?オォ!」
その鱗が笛になる
「それさえ吹けば俺が行く」
まぁ、呼び鈴てとこだと加える
「契約?」
何故それを知っている
「したいのか」
溜息混じりの息を吐く
竜胆は考えた後、静かに頷いた