ノートに情報をかきこむ手を止めて、客層のチェックもする。
この時間帯の利用客層は・・・。サラリーマンが多い。売れている商品は・・・一人当たりの売り上げは・・・平均滞在時間は・・・

つい仕事の目線で分析を始めてしまう莉緒。

いけない。

これじゃあせっかくの朝を堪能できない。と莉緒はノートを閉じて注文したモーニングセットに手を付け始めた。


『朝、早起きして、おいしい朝食を食べると一日を得した気分にならないか?』
過去からの言葉がまだ聞こえてくることが多い莉緒。

その低くて心の底から安心するような声が好きだった。

辛く悲しい事実を知るまではその声に満たされて、その声に一途な想いをぶつけていた。

あー。思い出したくないのに。
ブラックのコーヒーをぐいっと口に運んで飲みながら莉緒は景色に視線を移した。