「なぁ、莉緒」
「・・・はい・・・」
和哉は莉緒を市橋とも莉緒ともお前とも呼ぶ。

どの呼ばれ方にもその時の和哉の気持ちが感じられて莉緒は好きだった。
莉緒がちらりと和哉の顔を見上げると、和哉が子供のように無邪気な瞳を莉緒に向けていた。

「行こう!」
「え?」
「デート!」
和哉の提案に莉緒は微笑んだ。
「ずっとお前と行きたかった場所がたくさんあるんだ。まずは腹ごしらえからだな。支度しよう。」
出かけることが楽しみで仕方のない子供のような和哉に莉緒は微笑みながら、和哉に手を引かれて体を起こした。

和哉はシャツにパンツというかなりラフな格好。
莉緒は薄いワンピースだけ持ってきていた。