「ここの机です。私の机はあちらです。何かあればお伝えくださいね。」
再び愛想笑いを浮かべてから莉緒は自分の席に戻ろうとした。
その時
「市橋」
呼び捨てかい!と再び突っ込みを入れながら振り向くと、かなり無邪気な顔で笑いながら和哉が莉緒を見ていた。
「よろしくな」
この人・・・ちょっと苦手・・・

莉緒は自分のテリトリーに簡単に入ってきそうな和哉を少し警戒した。

それはただ、和哉が慣れ慣れしいからじゃない。
その席に座っているだけで、警戒してしまうのは、まだ過去を・・・捨てきれていないからだとわかっている。

前に座っていた人はもういない。違う人だとわかっているのに・・・。心が思い出してしまうからだ。