「?どうして下の名前を?」
莉緒は自分が苗字しか名乗っていないのにしたの名前まで知っていた男の顔を見る。
「自分の部下の顔と名前くらいは前情報で頭に入れています。上司として評価もする側になりますから、そのくらい知っていて当然でしょう。」
さっきまでの笑顔とは打って変わったきりっとした表情に、男の隣にいた課長の背中が少し伸びたのを莉緒も感じていた。

やりてといわれて、異例の年齢で部長になった理由が分かるような気がする存在感に、莉緒は少し緊張した。

「改めて、よろしくお願いしますね。市橋さん。」
もう一度挨拶をされて、莉緒も頭を下げた。
「よろしくお願いします。片寄部長。」


これが和哉と莉緒の出会いの瞬間だった。