「知ってました?私、実はブラックコーヒーが苦手だったんです。」
「・・・そうなのか?」
「はい。」
高辻が莉緒を見る。莉緒も、今度はまっすぐに高辻を見て話し始めた。

「私、社会人になって、一番初めにあこがれたのは高辻部長でした。」
「・・・」
「今も、私、部長にあこがれています。」
高辻の呼び方にも、莉緒は距離をとっている。それを察した高辻はこれから莉緒が切り出そうとしていることをすでに悟っていた。
だからこそ、莉緒の目をまっすぐに見て話しを聞いている。

「だから、部長に追いつきたくて、せめて横に並びたくて、必死でした。」
「・・・」
「部長に合わせて、ブラックコーヒーを飲んでたら、いつの間にか好きになってるくらい。必死だったんです。」
「・・・」
高辻の脳裏に出合ったばかりのころの莉緒が浮かぶ。