気を許せる人なんていないし、そんな人いなくていいと思ってる。
でもこの人は私が今まで関わってきた人達とはなにか違う雰囲気を感じた。
一瞬怪訝そうに眉を寄せた目の前のこの人は、
「真本怜哉」
ぶっきらぼうに一言だけ発した。
「怜哉さん、ありがとうございました」
今度こそ立ち去ろうとすると
「待て」
再度、鋭い声に足が止まる。
「人に聞いておいて自分は名乗らないでいくつもりか?」
たしかに。
人にだけ名前を聞いておいて自分は名乗らないなんて失礼もすぎるやつだ。
「宮坂凛愛です。あの、ほんとにありがとうございました」
お辞儀をして今度こそほんとに学校に向かう。
「宮坂凛愛、か」
玲哉さんがそう呟いてることも知らずに────。
