アパートまで、あと10分という距離で車を降りた怜哉の意図がわからなくて、そう尋ねた。
「凛愛に、渡したい物があったから」
私に渡したいもの……?
「目瞑って、手出して」
そう言われた私は、素直に目をつぶって手のひらを上にして両手を出した。
怜哉が取ったのは左手。
薬指に硬い感触を感じて目を開ける。
「……え、これって」
薬指の付け根でキラっと輝いたのはシルバーのリング。
「まだ安モンだけど、本物は俺が結婚できる年になった時に」
そう言って口角を上げた怜哉が次第にぼやけてくる。
「……ふっ、うぅ」
なんでこんなに私が喜ぶことばっかりするんだろうか。
怜哉の服を引っ張って少しだけ背伸びして、怜哉の唇に私のそれを重ねる。
