―――……婚、約?
私は怜哉と別れなきゃいけない……?
まだやっと伝えられたばっかりなのに?
話の内容を理解して混乱する私の頭を、撫でる大きな手。
「大丈夫。婚約はしない」
その言葉に無性にホッとして、泣きそうに歪んだ顔を見られたくなくて俯く。
「婚約しないって父さんに言いに行く」
「私も行く……っ」
無意識にそう口にしてから、あっと思った。
怜哉も驚いたように目を見張っている。
「あ、ごめん。でも私が行かなかったら逃げてるみたいになるの嫌だから。ちゃんと怜哉のお父さんに挨拶したい、なって思ったんだけど……」
