「なにが?」
「なんかあった?」
疑問で返してきた怜哉に、疑問で返す。
「……別に、なにも」
いつも私の疑問には丁寧に答えてくれる怜哉が、答えを濁した。
ざわざわと嫌な予感が胸によぎる。
「どうしたの?らしくないよ」
敢えて引かずにそのまま聞いた。
怜哉には今まで沢山助けてもらったぶん、怜哉のことを私が支えたい。
少し躊躇って、右を歩く怜哉の左手を握る。
「大丈夫。怜哉は1人じゃない」
とにかく何か言いたくて、そんなことを呟いたら、大きく目を見開いた怜哉と目が合う。
そして怜哉は力が抜けたように頬を緩ませて、小さな声で言った。
「やっぱり凛愛には敵わないな」