「おい」
瞬間、聞こえてきたのは私の大好きな声。
男の腕を掴んだのは、私の大好きな人。
「っ……れ、いや」
「はなせ」
冷たく低い声で、男を鋭く睨む。
「チッ」
怜哉の睨みに負けて、その人は舌打ちを残して去っていった。
「……凛愛。もう大丈夫だから泣くな」
「っ、これはあの人のせいじゃない……」
「は……?じゃあなんで泣いてんの?」
「怜哉、のせい……でもないけど…」
怜哉のせいって言いかけた。
でもそれは絶対違う。
怜哉はなにも悪くない。
ただ、私が自信を持てなくて勝手に不安になってるだけなんだから。
