気づいたら涙が溢れていて。 とめようと思ったけど、とまらなかった。 そんな私をふわっと包み込んだ柑橘系の香り。 「……思い出した?」 耳のすぐそばで聞こえた低い声。 「……う、ん。全部、思い出したよ」 嗚咽を漏らしながら、そう答えた私を1度胸から離した怜哉は、頬につたう涙を拭って。 「その頃からずっと好きだ。……俺と付き合って」 10年くらい前、初めて見たものと変わらない笑顔を浮かべてそう言った。 「おねが、い……しますっ…」