いやいや、ありえない。



だって怜哉と私が会ったのは、あの入学式の朝がはじめて……―――?




「俺がその子についてわかっていた唯一のこと」




そこで一旦、言葉を切った怜哉。



「りっちゃん―――……そう呼ばれていたこと」



────ズキン



頭が痛んで思わず額に手を当て、顔をしかめる。




「おい、凛愛?」



怜哉の声が遠く聞こえる。



――――…りっちゃん。




それは私の亡くなった実のお母さんに、呼ばれていた私の名前。