君の笑顔が見たいから


ぎゅっと目をつぶった顔の前で、パンっと手を合わせてそう言った柚希に、



「いいよ、どうせ暇だし。バイト頑張って」



と、返す。




慌ただしく走っていった柚希の背中を見て、フッと小さく笑みが零れた。



自分も帰ろう、と立ち上がったところでカバンを教室に置きっぱなしにしていることを思い出した。




テスト前で教科書を沢山持って帰るから、重いカバンは置いておいて、数学の参考書だけ持ってきてたんだった。



カウンターで仕事をしていた図書委員に軽く会釈をして、図書室をあとにする。




空が灰色の雲に覆われているのが窓から見えて、足をはやめる。