小さな声だったけど、私の耳はそれを拾った。
「"あの子"?」
「え、あー怜哉のやつ、小さい頃から1人の女の子をずっと探してるんだよね。俺はその子に助けられたんだって」
────ドクンッ
怜哉はずっと前から探している女の子がいる……。
少し前の、文化祭の日の記憶が蘇る。
怜哉が……勇気、をくれた日。
恐らく怜哉は、その子の事が好きなんだろう。
高梨くんの言葉のニュアンスから、そう読み取ることができた。
―――自分の想いを自覚した途端、失恋か。
まあ、もともと気持ちを伝えるつもりはなかったけど……少しだけ苦しい。
