君の笑顔が見たいから


小さな声だったけど、私の耳はそれを拾った。



「"あの子"?」



「え、あー怜哉のやつ、小さい頃から1人の女の子をずっと探してるんだよね。俺はその子に助けられたんだって」



────ドクンッ




怜哉はずっと前から探している女の子がいる……。




少し前の、文化祭の日の記憶が蘇る。



怜哉が……勇気、をくれた日。



恐らく怜哉は、その子の事が好きなんだろう。




高梨くんの言葉のニュアンスから、そう読み取ることができた。




―――自分の想いを自覚した途端、失恋か。



まあ、もともと気持ちを伝えるつもりはなかったけど……少しだけ苦しい。