7時50分。 ドアが開く。 橘(たちばな)さんは澄ました表情で私の斜め前の席に着き、本を開く。 そして『宇宙の記憶』という本を読み始めた。 いつも決まって宇宙に関する本を読んでいる。 彼女を密かに見ていることを、彼女はきっと知らない。 これがいつもの、私たちの朝。