7時40分
「おはよう!松乃。今日も早いね」
いつものことなのに、実優はいつも同じことを言う。
それは2人だけの合言葉のような、
何かの合図のような。
これから始まる、私たちの、私たちだけの国。
教室一杯に城を作っていく。
おはよう、と返すと実優は嬉しそうに笑って、
登校中にいつも出会う、白い犬の話や、いつも同じ電車の同じ席に座っているサラリーマンの話を楽しそうに話しながら、黒板にアンバランスな犬やサラリーマンを描いていく。
白い犬はフワフワしているから、ふわちゃんと言うらしい。
オスなのだそうだ。
ふわちゃんも自分がオスかメスか分からなくなりそう、笑ってそんなことを言っていた。
サラリーマンとも、今朝、世間話をしたのだそう。
私の思い描くサラリーマンは、お父さんのような人だ。
中年でくたびれているような、そんな感じ。
でも、彼女の話してくれるサラリーマンは若くて、かっこいいらしい。
経営に関わる仕事をしているのだそうだ。
彼女は天真爛漫で、少し天然。
毎日見かける人に話しかけては、仲良くなり、話をするのだそう。
そして、毎朝何を話したか楽しそうに話してくれる。
心なしか普段より大きくなる声。
たった20分、されど20分。