ふと顔を上げると、ピンとした背筋が見えた。
それは、いつもなんとなく注目している橘さんの背中だった。
彼女は、どんな視線も跳ね返すように、凛としている。
本当は私だってあんな風に堂々としたい。
『気になる人に声を掛けるチャンス!
予期せぬことが待ってるかも~』
朝見た、『ハッピー占い』を思い出した。そうだ、もしかしたら、何か良いことがあるかもしれない。
今しかないんじゃないか。
今、この時間に誰かに話しかけたら、今日1日、その子と一緒に歩けるかもしれない。
独りにはならないかもしれない。
3人以上でグループになっているのがほとんどだ。
一番話しかけやすそうな、成田さんもいつもの3人グループで楽しそうに話していた。
2人だったらまだ話しかけれたのに。
ここにきて、自分のコミュ障が発動されるなんて情けない。
一人でいるのは橘さんしかいない。
当然といえば当然だ。
まあ、今日だけ。
今日だけ、橘さんに話しかけよう。


