だけど、橘さんは少し違う。 堂々と我関せずで、本を読んでいる。 そんな彼女が羨ましい。 みんな同じパレットを持って、周りを意識しながら、目配せしながら、みんなと同じになるように絵の具を慎重に選んで、水で丁寧に溶いて。 それなのに、彼女はパレットすら持っていない。 そんな気がする。 本は「独り」を象徴する道具だ。 教室で本を読むなんて、 そんな勇気、私にはない。