毎朝、同じ電車の同じ席に座り、同じ駅で降りる彼女。 眠い目を擦(こす)り、欠伸(あくび)を噛み締めながら、俺にもこんな時代があったんだよなと思う。 昨日のことのようで、もう6年も経っていることに驚きながら、昔のことに思いを馳(は)せるなんて、もう俺もおじさんだなと思う。 でも思い出さずにはいられない。 俺は心の奥にある呪縛を背負って生きている。 俺は、オーナーの息子から薦められた「銀河鉄道の夜」を読みながら、最寄り駅に着くのを待った。