駅を出て歩いていると、私とお兄ちゃんが働いているオフィスビルが見えてきた。

「それじゃあ、またな」

「うん、頑張ってね」

お兄ちゃんは3階フロアにある『二月銀行』に、私は15階フロアにある広告代理店『高崎エージェントシー』で契約社員として働いている。

エレベーターの中でお兄ちゃんと別れると、私は自分の会社がある階へと向かった。

「おはようございます」

「おはよう」

オフィスに足を踏み入れてあいさつをすると、すでにいた人たちが迎えてくれた。

「田渕さん」

椅子に腰を下ろした私に声をかけてきたのは、高崎さんだった。

「はい」

「今日の13時に取引先の『オトクニ広告株式会社』の方が見えるので、お茶の用意をお願いします」

高崎さんが言った。