「お兄ちゃん、やめて…!」

「希里恵ちゃん」

間に入ろうとした私を止めるように、雪穂さんが抱きしめてきた。

「妹はな――希里恵はな、あんたのためを思って自分から身を引いたんだぞ!?

あんたの父親に頼まれて、あんたとあんたの会社のためを思って何も言わずに自分から離れたんだぞ!?」

怒鳴るように言ったお兄ちゃんに、
「えっ…?」

周晴さんは驚いた顔をした。

「それなのに、あんたは希里恵の思いをムダにするのかよ!?

希里恵がどんな思いであんたから離れて、どんな思いであんたの子供を産んだのか…あんたはそんな妹の思いを踏みにじるつもりなのかよ!?」

「ちょっ…ちょっと待ってください、父親に頼まれたって…えっと、どう言うことなんですか?」

周晴さんが苦しそうにお兄ちゃんに質問した。