「――出て行け、だって」

お兄ちゃんが言った。

私は雪穂さんの胸から顔をあげて、お兄ちゃんを見つめた。

「父親の顔もわからない子供を産むんだったら、今すぐにこの家から出て行け…って」

「そんな…」

雪穂さんが今にも泣きそうな顔で呟いた。

「俺たちもだ」

続けて、お兄ちゃんが言った。

「そいつの味方をするなら、お前たちも今すぐに出て行け…って」

お兄ちゃんは雪穂さんを見つめた。

雪穂さんはキッと決意したような顔をすると、
「もちろんよ」
と、言った。

「出て行けって言うなら、出て行ってやるわ。

そうでしょ、風斗」

そう宣言した雪穂さんに、
「お前なら言ってくれると思ったよ」

お兄ちゃんはフッと口角をあげた。

「当然だわ」

雪穂さんはそう言い返した。