リボン~もう1度君に、プロポーズ~

でも、教えて欲しかった。

私が知ったところで何ができるかどうかはわからないけれど、教えて欲しかった。

「田渕さん、お願いだ」

「えっ、あの…」

周りがいるにも関わらず、乙國さんは私に向かって頭を下げてきた。

「どうか、あの子の前からいなくなって欲しい。

その方があの子のためになるから」

頭を下げてそう言った乙國さんを私は見つめることしかできなかった。

どうして黙っていたの?

何で教えてくれなかったの?

ここにいない周晴さんを責めたところで、会社の状況がよくなる訳がない。

私がやることは、ただひとつだけだ。

「――わかりました」

そう言った私に、乙國さんは顔をあげた。

「――周晴さんと、別れます…」

私は会社のために、周晴さんのために…自分から身を引くことを選んだ。