仕事の教え方がとてもわかりやすくて、自分が社長の息子だと言うことを鼻にかけないその謙虚でまじめな彼のその姿に、私はこの人のようになりたいと思っていた。

この時は、本当に憧れていただけだった。

憧れ…と言うよりも、“尊敬”と言った方が正しいかも知れない。

その気持ちが“恋”へと変わったのは、3ヶ月後のことだった。


「――うっ、気持ち悪い…」

デパートのトイレに入ると、私は息を吐いた。

この日は“暑気払い”と称したマーケティングチームの飲み会だった。

飲み会の会場は、デパートの屋上ビアガーデンだ。

お酒があまり得意じゃない私は飲み会について行くのが精いっぱいで…おかげで飲みすぎてしまった。

明日は休みだからいいんだけど…寝るだけになってしまいそうだ。