芸能人ですって言われたら信じちゃいそう…と、そんなことを思った。

顔立ちは俳優のように整っていて、スタイルもとてもいい。

そのうえ、ここ『オトクニ広告株式会社』の社長の息子――要は“御曹司”と言うヤツである――ときたもんだ。

まるでマンガか小説のような人物だなと、私は思った。


入社してから1週間が経った昼休みのことだった。

「田渕さんの指導係って、あの乙國さんだよね?

いいよねー、うらやましい」

同期の川瀬さんと昼ご飯を食べていたら、そんなことを言われた。

「そんなことないよ」

首を横に振った私に、
「だってかっこいいし、社長の息子だし、頑張れば玉の輿も夢じゃないじゃん」

川瀬さんは言い返した。