「だから、ごめんなさい…。

あなたとつきあえないです…」

私は頭を下げると、逃げるようにその場から離れた。

「希里恵!」

周晴さんが私の名前を呼んだ。

嬉しかった。

好きな人と再会できて、嬉しかった。

でも、結ばれることはできない…。

私は周晴さんにふさわしい人間じゃないからだ。

――会社のためを思うなら…何より、息子のためを思うなら、別れて欲しいんだ

夢の中の出来事が頭の中によみがえった。

――どうか、あの子の前からいなくなって欲しい

「――優し過ぎるよ、周晴さん…」

私だって、周晴さんを忘れたことなんて1度もなかったよ。

――その方があの子のためになるから

あなたのためを思ったから、私は何も言わずにあなたから離れのに…。